胸膜プラークとは、主として壁側胸膜(肺の外の膜で胸腔にくっついている薄い膜)に生じる両側性の不規則な白
板状の肥厚です。厚さは1〜10mmと多彩ですが、多いのは1〜5mmのものです。胸膜プラークそれ自身では肺機能 障害を伴わず、胸膜の疾患を意味するものではない、つまり良性の病変と考えられています。
石綿ばく露との関係
日本では「胸膜プラークは石綿ばく露によってのみ発生すると考えて良い」(厚労省研究会報告書より)とされてお
り、従って過去の石綿ばく露の指標として極めて重要です。しかも胸膜プラークは、石綿ばく露によって発生する胸膜 病変の中で最も頻度が高くなっています。胸膜プラークの症例1 胸膜プラークの症例2.3
石綿ばく露開始からの経過年数と関連しており、ばく露開始から10年未満では発生しませんが15〜30年を経て出
現します。そして、20年を経過すると一部が石灰化(レントゲンやCTで白くくっきりと写ります)する場合があります。
石綿ばく露によって発生する中皮腫の18〜86%に胸膜プラークが合併していると報告されています。また、石綿ばく
露者に合併した原発性肺がん症例のうち、胸膜プラークを有する症例は所見のない場合の2.4倍であったと報告され ています。
石綿ばく露量が多いほど胸膜プラークの発生率が高いことが報告されています。また、胸部エックス線で石綿肺所
見を有しない石綿ばく露によっても胸膜プラークが発生することも報告されています。
胸膜プラークの所見を認めた場合、職業性石綿ばく露によることはもちろんのこと、副次的職業性、近隣性、家族
性等何らかの石綿ばく露を想定すべきであり、詳細な問診が必要です。
胸部エックス線で認められる胸膜プラーク陰影は経過とともに徐々に石灰化し、その濃度を増すとともに、拡がって
いきます。好発部位は、胸壁背外側第7-10肋骨外側6-9肋骨、横隔膜、傍脊椎領域です。但し、肺尖部や肋骨横 隔膜角には通常認められません。
胸膜プラーク自体が他の良性石綿胸膜疾患(胸膜炎、びまん性胸膜肥厚、円形無気肺)を引き起こすことはなく、
また、中皮腫に転化することもありません(前ガン病変ではない)。しかし、胸膜プラーク有所見者は無所見者に比べ て石綿の累積ばく露量が多いと考えられており、したがって、中皮腫のリスクは無所見者よりも高い、と推測されて います。
画像での特徴
存在を否定するためにもCTは必須です。しかし、CTにてもプラークは認めないが、胸腔鏡下や開胸による手術時ま たは剖検時などに肉眼的にプラークを確認する症例がすくなからず存在する。
参考 CTでのプラーク偽病変
@胸膜下脂肪層 非石灰化プラークでもCT吸収値は脂肪より高い。プラーク≧筋肉>脂肪
A肋間静脈 造影CTで鑑別容易
B胸膜直下の肺野病変 肺野条件での炎症像の存在比較。
C陳旧性結核などの炎症性胸膜肥厚
結核性では通常片側性で比較的広範な胸膜肥厚。石灰化は臓側胸膜側優位に生じる。
職種別胸膜肥厚斑の頻度(芝病院 労災・職業病科 藤井 正實氏)
*胸部レントゲン写真による調査
建設関連労働者には4〜5%に胸膜肥厚斑が認められた。
*建設作業者の剖検による胸膜肥厚斑建設作業者の剖検による胸膜肥厚斑
建設作業者の剖検数;46例 平均年齢;61.0±8.1 歳
レントゲンで胸膜肥厚斑を認めなかった41例中、剖検では33名に認めた(80.5%)
職種別検討・職種別検討
大工11/14 空調・保温・吹きつけ3/4 配管4/4 左官5/6 ハツリ 3/3
電工3/3 塗装2/2 築炉2/2 鉄工・溶接3/4 タイル・瓦2/2 石工0/1 木工0/1
胸部レントゲンで認められなくても剖検では高率に胸膜肥厚斑が認められた。
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