石綿新法の内容と問題点
  石綿による疾病の労災認定基準の改正について2/9
石綿新法政府情報窓口は首相官邸から
厚労省発表 厚労省HP石綿情報より
アスベスト問題に係る総合対策の概要pdf 平成17年12月27日
アスベスト問題に係る総合対策pdf 平成17年12月27日
石綿による健康被害の救済に関する法律案(仮称) 平成17年12月27日
石綿による健康被害の救済に関する制度案の概要pdf 平成17年12月27日  石綿障害予防規則 平成17年2月24日
各党、団体の見解
民主党
共産党
石綿対策全国連絡会議
石綿肺がんの労災認定基準案(厚労省・環境省)









アスベスト新法に対する緊急の意見表明 2005年9月15日
石綿対策全国連絡会議 (連絡担当: 事務局長 古谷杉郎)

 1987年の設立以来、アスベストの早期全面禁止と総合的対策の確立を訴え続け、被災者とその家族、労働者、市
民の取り組みを支援してきた石綿対策全国連絡会議は、この2か月余のアスベストに対する社会的関心の高まりの
なかで、すでに7月26日に「アスベスト問題に係る総合的対策に関する提言」(http://park3.wakwak.com/~banjan/
050726teigen.html)として、取り組まれなければならない諸課題を提起しています。
 また、8月3日の参議院厚生労働委員会におけるアスベスト問題集中審議に、事務局長の参考人としての出席に
応じ、とりわけ緊急に政治的決断が必要と思われる課題を提起し(http://kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/で検
索可能)、今般の衆議院選挙にあたっても同様の趣旨から、8月24日に「アスベスト対策に関する公開質問状」を各
政党に送り、9月1日には各党から寄せられた回答も公表しています(http://park3.wakwak.com/~banjan/
situmonjyo.html)。
 さらに昨日(9月14日)、7月6日に送付した「要望書」(http://park3.wakwak.com/~banjan/youseisyo.html)に基づ
いて(社)日本石綿協会との話し合いの場ももったところです。マスコミ関係の皆様方には同日午後に行った結果報
告の記者会見で報告させていただいたところですが、同協会は私たちの要請を受け入れて、少なくとも今年5月に発
行した『既存建築物における石綿使用の事前診断監理指針』(定価2千円で販売中―http://www.jaasc.or.jp/new/
pdf/sisinpr0505-1.pdf。一部は前日に「石綿含有建築材料の商品名と製造時期」(http://www.jaasc.or.jp/other/
ganyu_05.pdf)として公表済み)、及び、1983年以降の協会加盟各社事業場の作業環境測定結果、1989年以降の
工場敷地協会における大気中石綿濃度測定結果、2001年以降のPRTR(環境汚染物質排出・移動登録)排出推計
量、の各データについてはできるだけ早く同協会のホームページ上で公開すると回答しました。
 私たちからは、さらに一層の内容のある情報開示に努めること、被害者に対する補償責任の履行を真摯に果たす
ことなどをあらためて要請しました。被害者救済のための新たな立法的措置が取りざたされるなかで、労災保険が法
律による最低限の補償でしかないことなどから各企業が独自に定めている「上積み補償制度」の内容を公表すること
が、とりわけ重要であると指摘したところです。
 問題のひとつは、アスベストの輸入・製造・使用等に携わってきた企業で、同協会に加盟していなかったり、アスベ
ストの取り扱いを中止したとたんに同協会を脱会する企業も少なくなく(現在の同協会の会員は29社・2団体にすぎま
せん)、それら企業が私たちの要請にどう応えるかを含めて、どのように社会的責任を果たしていくのかということで
す。自社には要請がなかったから知らない、ではすまされない問題であると考えています。
 さらに問題なのは国の対応です。率直に言って、この2か月間、不十分な法制度を改革するという点においては、
国は何も実行していないと言わざるを得ない現状だと考えます。しかも最近、「労災補償を受けずに死亡した労働
者、家族及び周辺住民への対応については、救済のための新たな立法措置を講ずることとし、次期通常国会への法
案の提出」をめざし、「9月末までに具体的な結論を得る」とされた(8月26日改訂、アスベスト問題に関する関係閣僚
による会合「アスベスト問題への当面の対応」)、新法の内容について、いくつかの報道がなされているところです。
 私たちは、伝えられるような内容の被害者救済のための新法のみで、不十分な法制度の改革の幕引きがなされる
ような事態を看過するわけにはいきません。昨日、記者会見後に開催した運営委員会において、このような状況を踏
まえて緊急に以下の見解を表明することを決定いたしました。

1. 労災補償の対象でない周辺住民や労働者の家族、一人親方や個人事業主などのアスベスト被害者およびその
家族に対する補償を―すでにクボタ、関西スレート、ニチアスが住民被害者に対して支払ったような見舞金を新法で
肩代わりするかのような―一時金で済ますのでは、到底「補償」制度とも呼べず、断固反対します。それらのアスベ
スト被害者に対して、治療費はもとより労災補償に準じた所得・遺族補償等がなされるべきです。

2. 「時効」のために労災補償が受けられなかったアスベスト被害者に係る補償を、労災が適用された際の遺族年金
と同程度の給付額に限定することに、断固反対します。本来受けられた労災補償を受けられるよう、時効を適用しな
いようにする法的措置がとられるべきです。

3. 中皮腫の事例については、労災補償または新法による補償制度いずれかの対象とされるべきです(アスベスト曝
露によるものでない事例を除くことはありえますが、そのことを科学的に立証することはほとんど不可能であろうと考
えられます)。

4. すでに死亡してしまっている中皮腫患者の事例等について、実施不可能な追加検査等、理不尽な負担を遺族等
に負わせて、補償を遅らせたり、補償を受けられなくなるようなことがないよう、そのような場合には、死亡診断書記
載の主治医の診断名を尊重するなどの原則を明確にすべきです。

5. アスベスト関連肺がん、その他のアスベスト関連疾患についても、労災補償の取り扱いに準じて、新法による補償
制度の対象とされるべきです。

6. 青石綿(クロシドライト)が使用されていた時期にアスベストに曝露したと推定される者に限るなどの時期指定や、
特定のアスベスト関連工場周辺住民に限る等の地域指定など、補償にあたって限定条件をつけるべきではありませ
ん。

7. 新規立法による対応が必要な課題は、上述のような被害者の補償の問題に限るものではありません。とりわけ、
私たちの身のまわりに残されている既存アスベストの把握・管理・除去・廃棄等を通じた首尾一貫した対策の確立
は、現行の複数の法律が関係しながら整合性を欠く面も少なくなく、また、いずれにもカバーされない(縦割り行政の
隙間に埋もれる)課題も多いため、新規立法による対応が不可欠であると考えています。そのような内容を含めた、
アスベスト対策基本法を制定すべきです。

以上



日本共産党の「アスベスト(石綿)対策特別措置法案大綱」(全文) 8月31日

 政府は二十六日、アスベスト(石綿)問題に関する関係閣僚会議を開き、石綿による健康被害に対応するために、
特別立法で救済する方針を決定しました。決定内容は、来年の通常国会で新法を制定する、二○○八年としている
石綿全面禁止時期の前倒しを検討するなどとしています。しかし、政府の姿勢は、「関係省庁の十分な連携が図ら
れたとはいえず、反省の余地がある」としながら、具体的な行政責任を明確には認めず、「今後とも精査する必要が
ある」にとどまっています。また、新法による救済内容も、補償基準や範囲、財源などが明確になっていないことか
ら、患者や家族の間には不安の声が上がるとともに、「総選挙対策では」との批判もでています。

 石綿の健康被害は、この間の被害実態の公表や国会質問などから、安全対策も不十分なまま大量の石綿の製造
と使用を続けてきた企業と、危険性を認識しながら長期にわたって使用を容認してきた政府の責任がますます明確
になってきています。日本共産党は、その政府と関係企業の責任と費用負担で、すべての健康被害者等の保護・救
済、早急な石綿の全面禁止、今後の健康被害拡大の防止対策などをはかる法案の大綱を緊急に提案します。

 【法案大綱の主な内容】

 一、石綿によるすべての健康被害者等の保護、救済を目的とした法案。

 石綿の製造・輸入・販売・使用等に伴って生じたすべての健康被害者等に対する補償並びに被害者の健康管理に
必要な事業及び石綿除去等に伴う健康被害を予防するために必要な事業について、国及び原因企業等(製造・輸
入・販売・使用・元請等)の責任と費用負担で実施することで、健康被害者等を迅速に保護し、石綿による健康被害
の救済をはかるものです。

 二、健康被害の療養補償等は労災保険及び公害健康被害補償の水準に。

 石綿による健康被害者に対する補償は、労災保険及び公害健康被害補償の水準として、(1)療養給付及び療養
費、(2)休業補償、(3)障害・損害補償、(4)遺族補償等、(5)児童・介護補償等を給付します。

 三、健康診断や治療体制の整備などの石綿健康福祉予防事業を実施。

 政府は、石綿の製造・輸入・販売・使用等が行われた事業場及び工場の従事者及びその家族、周辺住民の健康
診断を行い、石綿による健康被害者に健康管理手帳を交付し、継続的な健康管理の確保を図ることにします。また、
政府は、健康被害者の健康を回復させ、その健康を保持させ、及び増進させる等の福祉を増進し、並びに健康被害
を予防するために必要な診断・治療体制の整備をおこないます。さらに、政府は、石綿による健康被害を予防するた
め「相談窓口」を設置し、必要な情報を提供します。

 四、早急な全面禁止、建築物解体への助成及び万全な曝露防止対策を実施。

 政府は、石綿の新規の製造・輸入・販売・使用等を早急に全面禁止し、石綿含有製品及び在庫品を回収します。
なお、廃鉱山、埋立地等の安全の確認と対策を講じます。また、政府は、石綿含有建築物等の解体事業に伴う健康
被害の予防に関する計画の作成、健康相談、健康診査、予防器具等の整備に対する助成措置を図ります。さらに、
政府は、廃石綿の排出・保管・廃棄等を把握し、適正な処理をはかります。なお、震災等による石綿含有災害廃棄
物の適正処理計画を作成します。これらを実効あるものにするために、政府は、製造・使用者等に自らの製造量、使
用箇所等の公表を義務付け、石綿含有建築物解体等の現場への報告の聴取、立入検査、改善措置、情報の公表
を行います。

 五、健康被害者救済は製造・使用等原因企業及び国の責任と費用負担で。

 政府は、補償給付の支給、並びに健康福祉予防事業及び健康被害予防事業に要する費用について、石綿の製
造・輸入・販売・使用・元請等を行った健康被害原因企業の納付金と国庫補助金を充てることにします。また、政府
は、石綿の製造・輸入・販売・使用・元請等を行った事業場及び工場の設置者から、健康被害賦課金を徴収すること
にします。ただし、石綿の製造・使用等を行った中小・零細企業、及び中小・零細な下請企業については、徴収につ
き配慮し、適切な支援措置をはかります。

 六、健康被害を生じている従事者(死亡者も含む)及び家族、周辺住民を認定。

 政府は、石綿の製造・輸入・販売・使用等が行われた事業場及び工場に、一定期間、従事した者及びその家族、
周辺に居住した者のうち、石綿による健康被害が生じている者について、健康被害の認定を行い、救済します。な
お、石綿による健康被害の特性を考慮して、かつて石綿による健康被害で死亡した従事者及びその家族、周辺住民
についても同様に救済することにします。そのために政府は、健康被害認定審査会を置き、健康被害の認定業務を
行います。健康被害者は、健康被害の認定業務につき、不服を申し立てることができます。

 七、立入調査及び情報公開などで石綿曝露防止対策を徹底。

 政府は、石綿の製造・輸入・販売・使用等が行われた事業場及び工場等への必要な報告の聴取、立入調査、改
善措置、情報の公表を行う。また、政府は、石綿の製造・使用等の事業場及び工場(跡地を含む)の濃度、及び周辺
地域等の濃度の実測調査、並びに石綿の製造・使用等による健康被害に関する必要な調査研究を行い、石綿曝露
防止等のための対策を徹底します。





肺がんの救済基準まとまる 石綿被害で専門家検討会 
 
記事:共同通信社 【2006年1月12日】

 アスベスト(石綿)による被害救済で、環境、厚生労働両省がつくる専門家による検討会は11日、肺がん患者につ
いてエックス線などで一定以上の石綿特有の所見が見つかった場合、救済の対象にするべきだとの認定基準の骨
格をまとめた。
 今回の認定基準は労災でカバーされない工場周辺住民、労災制度から漏れてしまった一人親方、中小企業の事
業主で肺がんとなった人が対象となる。労災対象者の場合は、これに加え「石綿作業従事10年」が要件となる。
 石綿特有の中皮腫については30歳以上を原則救済することが既に決まっており、検討会は2月までに最終的な報
告書をまとめる。
 検討会では、具体的にはエックス線やコンピューター断層撮影(CT)の画像で、胸膜部分に「プラーク」があり、か
つ肺内部に「線維化」が確認できれば、石綿が原因と推定できるとした。プラークは胸膜に局所的に厚みができるこ
とで、線維化は石綿が肺に入ったため細胞が弾力性を失い固くなる状態をいう。
 肺がんは喫煙で発症率が高まるため、医学的に因果関係を石綿だけに特定するのは極めて難しい。また石綿製
造施設の周辺で肺がん患者が増加した、という疫学的報告は世界的にもなかった。
 このため検討会では、周辺住民には石綿による肺がんが発症する可能性は極めて低いと判断し、一定の認定基
準を作ることになった。