石綿について Q そもそも石綿って何ですか Q 石綿とロックウール(岩綿)は違うのですか Q ロックウールは安全ですか Q 石綿は飲んでも安全ですか 石綿による病気 Q 石綿によってどんな病気になるのですか Q 石綿による病気と紛らわしい病気は何ですか Q 石綿による深刻な病気としては中皮腫が一番多いのでしょうか 体内に残る石綿の証拠 Q 石綿による肺や胸膜の病気と他の原因の病気とを区別する方法はありますか Q 胸膜肥厚斑(プラーク)は胸部単純写真でも指摘できますか Q 病理標本で石綿小体が1つでも見つかれば石綿による病気といえますか 石綿暴露の危険性評価 Q 石綿が危険だというのは分かるがどの程度危険なのですか Q 何本以上吸うと危険だという目安はありますか Q 石綿を吸った人がタバコを吸うと危険だと聞きましたが Q 石綿の危険性はどれも一緒ですか Q 日本では石綿による被害はどの程度になるのでしょうか 日本人の石綿吸入の実態 Q 私は石綿を吸った覚えがないのですが大丈夫でしょうか Q その石綿はどこから来たのですか Q 大気中の石綿はなくならないの 石綿の種類や使用法による危険性の差 Q 石綿はどこに使われたのですか Q 最も危険な青石綿は何に使われたのですか Q 青石綿は何年まで使用されましたか Q 青石綿を使用していると思われる建物の見分け方はありますか Q 次に危険な茶石綿は何に使われたのですか Q 茶石綿は何年まで使用されましたか Q 茶石綿を使用していると思われる建物や建材の見分け方はありますか Q 使用量が最も多い白石綿はいつまで使用されたのですか Q 日本の石綿規制は諸外国より遅れたとの事ですがその影響はありますか Q 白石綿を使用している建物や建材の見分け方はありますか Q 古い建物があちこちで解体されていますが大丈夫でしょうか Q どんな職歴の方が特に危険ですか Q 具体的にはどんな業種が要注意ですか Q 石綿暴露が想定される具体的な職業は何ですか Q 気づきにくい石綿暴露の可能性がある職歴にはどんなものがありますか 石綿暴露者への対応 Q 石綿を吸った全ての人が中皮腫などの検査を受ける必要がありますか Q 石綿による危険度の高い人への健康診断制度はありますか Q 石綿の検査にはどのような項目が必要ですか Q 肺がんの検査や石綿肺や胸膜肥厚斑などの検査を勧めるかどうかの基準はありますか Q そもそも石綿って何ですか A 天然に取れる何種類かの綿のようになる石(繊維状鉱物)の総称です。糸をよって織物にしたり、フェルトのような 不織布が作れます。多く使われ健康に問題を起こすのはクロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、クリソタイル (白石綿)の3種類です。
Q 石綿とロックウール(岩綿)は違うのですか A 石綿は天然鉱物ですが、ロックウール・スラグウールは人造の鉱物繊維です。成分も少し違いますが最も違うの はその細さで熱・摩擦や酸に対する強さも違います。石綿の細さは0.01−0.1μmですがロックウールは1μm以 上で太く、石綿はこすっても繊維のまま壊れませんがロックウールはこすると粒々に壊れます。床に飛散している古 い吹付け材が細い線維状のものであれば石綿である可能性が高いと思います。 Q ロックウールは安全ですか A 繊維の細さの違いによって、石綿は肺に入って残りやすく、ロックウールは肺に入りにくいので危険性に大きな違 いがあります。ロックウールも鉱物ですのでまったく安全とはいえませんが、石綿のような発がん性は明らかではあ りません。しかし、2004年までは石綿を含有していたロックウールもありました。 石綿等の種類と危険性のまとめ
Q 石綿は飲んでも安全ですか A 石綿入りの水道管がたくさん使用されていましたが、飲むことによる危険性は確認されていません。吸い込む事 による肺や胸膜などの病気がはるかに重要です。 Q 石綿によってどんな病気になるのですか A 石綿による中皮腫は有名ですが、肺がんも起こします。その他で一般の方にあまり知られていないのが、肺に線 維化が起こる「石綿肺」と胸膜の病気である「胸水・胸膜炎・びまん性胸膜肥厚」です。 Q 石綿による病気と紛らわしい病気は何ですか A 石綿肺は間質性肺炎(UIP)、肺線維症、肺気腫などの慢性肺疾患と診断されていることが多く、胸水・胸膜炎や 肺がんの中にも石綿によるものがかなりの割合で含まれていると思われますが、これまでは石綿の影響が見逃され ていました。中皮腫は大部分が石綿によるものですが、そのことを患者さんに伝えていない場合が多いのが実情 で、中皮腫の9割以上が労災認定や保障を受けないまま亡くなっています。
Q 石綿による深刻な病気としては中皮腫が一番多いのでしょうか A 石綿による肺がんや石綿肺の方が中皮腫より多く発生していると思います。中皮腫の大部分が石綿によるとされ ていますので分かり易く把握されやすいのですが、海外では石綿肺がんが中皮腫の何倍もあると言う報告もありま す。ドイツでは中皮腫の3倍以上の石綿肺や、中皮腫より多い石綿肺がんが労災に認定されています。見逃しをなく すため、間質性肺炎・肺線維症や肺がんの方に対して石綿の問診を取り、以下に述べる体内の証拠をしっかり調べ る事が求められています。 Q 石綿による肺や胸膜の病気と他の原因の病気とを区別する方法はありますか A 病気の初期にはCTのHR(高解像度)画像で石綿肺と間質性肺炎(UIP)の特徴に違いがあるようですが、進行す ると区別は困難です。胸水・胸膜炎や肺がんでは病気自体による区別は出来ません。区別に最も役立つのは問診 で、いつどこでどんな石綿を吸ったかを丁寧に聞くことです。しかし、知らないうちに石綿を吸っている方も多く、吸った ほこりの中に石綿が含まれていたか分からないのが実情です。そこで肺や胸膜に残る石綿の証拠を探すことになり ます。胸膜に残る石綿の証拠が胸膜肥厚斑(プラーク)で、肺に残る証拠が石綿小体です。胸膜肥厚斑は相当量の 石綿を曝露した者では20年後に10%、40年後には50%に見つかるとされている。
Q 胸膜肥厚斑(プラーク)は胸部単純写真でも指摘できますか A 胸膜肥厚斑は石綿の種類にかかわらず危険量の石綿を吸った証拠です。解剖・開胸手術や胸腔鏡で直接見る のが最も正確ですが、胸部単純写真での検出率は1割程度で、そのうち20%以上が誤判定(本当は肥厚斑なし)と いわれています。胸部CTの検出率もその2倍程度とされていますが、最新のMDCTによるHR画像では70%以上が 検出できるのではないかと期待されています。肺がんや間質性肺炎・肺線維症、胸水・胸膜炎の症例にはぜひHR CT画像による胸膜肥厚斑の検査をしましょう。肺がんや胸膜炎の診断や治療のために胸腔鏡や開胸手術をする際 には背部の壁側胸膜を観察し写真を撮ることが大切です。
Q 病理標本で石綿小体が1つでも見つかれば石綿による病気といえますか A 乾燥肺組織1立方センチあたり1000本の石綿小体が職業性石綿暴露の目安とされていますが、通常の病理標 本1平方センチでは平均して0.5本です。従って通常の病理検査で石綿小体が見つかった場合は石綿による病気 を強く示唆することになりますが、見つからないからといって石綿の影響を否定することは出来ません。更に、白石綿 のみの暴露では石綿小体は出来にくいと言われています。従って、労災の認定基準でも胸膜肥厚斑か石綿小体の どちらかがあれば石綿による病気と判断します。
Q 石綿が危険だというのは分かるがどの程度危険なのですか A 吸った石綿の種類や量と吸った年齢や年数が問題になります。大まかに言って、石綿を扱っていた作業者が病 気になる確率は喫煙者が病気になる確率、住民が石綿の飛散する場所にいて病気になる確率はタバコの副流煙を 吸って病気になる確率と同等と考えると分かりやすいでしょう。吸った量が多くなるほど重い肺の病気(石綿肺や胸 膜炎)になることや肺がんや中皮腫になる率が増えること(量反応関係)が分かっています。同じ量でも子供の頃や 若い時に吸った人ほど病気になりやすいといわれています。
Q 何本以上吸うと危険だという目安はありますか A ここまでは安全という範囲はわかっていませんが、1Lあたり1本の石綿を75年間吸い続けると10万人あたり22 人が余分に死亡するというデータがあります。本数にすると生涯で約2億本の石綿を吸うと1万人のうち2人が余計 に死亡するということです。しかし、若い頃に短期間でも高い濃度の石綿を吸うと合計の吸入本数が少なくても中皮 腫になることがありますし、他の発がん物質との相乗効果があると肺がんになりやすくなることも分かっています。
Q 石綿を吸った人がタバコを吸うと危険だと聞きましたが A 発がん性のある粉じんやガスが問題です。代表はタバコで喫煙している石綿作業者では肺がんになる確率が両 方とも吸わない人に比べて50倍程度になるといわれています。その他、排気ガスの中の発がん物質なども危険と 考えられます。石綿により肺や胸膜の細胞が壊れ再生するという過程を繰り返す所に、発がん物質があるとがんに なりやすいと考えられています。特に、白石綿の繊維はストローのように中空になっており、そこに他の発がん物質 が入り込むと「発がん物質を持続的に肺や胸膜に投与する装置」になると考える研究者もいます。 Q 石綿の危険性はどれも一緒ですか A 中皮腫を起こす危険性はクロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、クリソタイル(白石綿)の順ですが、肺が んについては茶石綿の危険性を指摘する研究者や種類の差はほとんどないとする研究者がいます。最も飛散し吸 入し易い吹付け材として使用されたのはクロシドライト(青石綿)が最も多く、次いでアモサイト(茶石綿)で、クリソタイ ル(白石綿)の多くはセメントなどで固められて使用されたことので、その点でも危険性に差があると思われます。総 合的にみて、危険性はクロシドライト(青石綿)が最も危険で、次いでアモサイト(茶石綿)、クリソタイル(白石綿)の 順番でしょう。 Q 日本では石綿による被害はどの程度になるのでしょうか A 海外のデータでは石綿使用量170トンにつき1人が中皮腫を発症しています。日本はこれまでに960万トンを輸 入していますので、環境省は海外のデータをあてはめ日本では約6万人が中皮腫を発症すると予測し、また、日本 では石綿肺癌として認定された例は中皮腫の7割ですので日本の石綿肺癌を約3万5千人と推定しています。しか し、中皮腫だけで10万人以上との推計もありますし、海外では石綿関連肺癌は中皮腫より多く、中皮腫と石綿関連 肺癌で20万人を越える可能性もあります。 石綿被害者の推計(環境省)
Q 私は石綿を吸った覚えがないのですが大丈夫でしょうか A 日本人なら全員石綿を吸っています。最近では都会の道路沿いの大気中には1Lあたり0.2本程度の石綿が含 まれています。人間は普通に生活していると1日に2万Lの空気を吸うため、1日約4000本、1年では150万本の 石綿を吸っていることになります。作業や運動をすると更に増えます。上記の過剰死亡危険度に当てはめると、この 程度の濃度では10万人のうち4人以上が石綿によって75歳までに命を落とすことになると推定されます。
Q その石綿はどこから来たのですか A 大気中の石綿の大部分は車や鉄道のクラッチやブレーキに使われた石綿といわれていますが、阪神大震災後に は西宮市で1Lに6本(以前の数十倍)の石綿が検出されていますので、ビルの解体が多い地域ではそれが大気中 の濃度に影響しているところもあるかもしれません。
Q 大気中の石綿はなくならないの A 石綿は非常に軽いので、空気中を漂い、一度地面に落ちても乾燥していればまた容易に舞い上がります。雨で 地上に落ちても乾燥すればまた舞い上がり、川に入り海に流れるまで地上と大気を行ったり来たりします。風に乗っ て何百キロも移動し、黄砂と同様に海を渡って大陸から飛んでくることも十分考えられます。 Q 石綿はどこに使われたのですか A 石綿は今までに約1000万トン輸入され、1995年ではその92%が建築材料に、6%が船舶・列車や自動車の 断熱やブレーキ・クラッチなどの摩擦材に、2%が産業機械や化学・発電設備の断熱や配管のつなぎ材(ガスケット やパッキン)などに使用されました。建築材料では屋根用スレート(60%)、押出成型セメント板(20%)、パルプセメ ント板・スラグ石膏板(5%)、外壁サイディング(5%)など多くが屋根や外壁の材料でした。現在でもこのうちの9割以 上残っているといわれています。 Q 最も危険な青石綿は何に使われたのですか A クロシドライト(青石綿)は青みがあるのが特徴で、非常に耐酸性が強くかつ強度が大きいため、鉄骨・梁・柱・屋 根などへの吹付け、耐酸性石綿織布、耐酸性石綿高圧管、化学プラントなどの耐酸性ガスケット(配管のつなぎ)な どに使用されました。特に吹付け材は飛散・吸入しやすいため最も危険です。
Q 青石綿は何年まで使用されましたか A 青石綿を5%以上含む吹付けは1975年に禁止されましたが、青石綿入り吹付け材は1971年まで、青石綿入り ロックウール吹付け材は1973年まで製造されていましたので実際に75年までは吹付けされていたようです。他の 用途での青石綿の輸入は1988年まで合計17万トンが輸入され、1989年まで流通していました。
Q 青石綿を使用していると思われる建物の見分け方はありますか A 当時の防火基準をクリアするため1955年から1975年 に建てられた(都市計画区域内の)3階建て以上の鉄 骨・鉄筋コンクリートの建物、もしくは、公共の建物(病院など)には全ての建物で青石綿が使用されていた可能性が 高いと思われます。それに該当する建物の吹付けや吹付け箇所の改築に従事した方は要注意です。解体の際には 事前検査や吸入・飛散防止措置が必要です。 Q 次に危険な茶石綿は何に使われたのですか A 茶石綿(アモサイト)は柔軟性があって強靭でスプリングファイバーとも呼ばれ、耐熱性に最も優れています。石綿 布団(ボイラーなどの断熱)、軒天や台所・風呂・洗面周りなどのケイ酸カルシウム板、柱・梁の耐火被覆板、鉄骨・ 梁・柱・壁・屋根などへの吹付けに使用されました。吹付け以外にも改修され易い水回りに使用されていたため要注 意です。
Q 茶石綿は何年まで使用されましたか A 茶石綿を5%以上含む吹付けも1975年に法的に禁止されましたが、実際には吹付けロックウールの一部に19 78年まで含まれていたことが確認されています。1993年に輸入が中止され、ケイ酸カルシウム板には1994年ま で使用されていました。
Q 茶石綿を使用していると思われる建物や建材の見分け方はありますか A 1975年から1980年まで に建てられた3階建て以上の鉄骨・鉄筋コンクリートの建物もしくは、公共の建物(病 院など)の吹付け作業従事(その周囲で作業)や吹付け材の露出箇所へ出入りした方は要注意です。また、1995 年までに作られた軒天・耐火内装(壁、天井、梁、柱)や台所・洗面・風呂場・ボイラーなど熱源周辺の建材の改修や 解体の際には対策が必要です。 Q 使用量が最も多い白石綿はいつまで使用されたのですか A 1%以上石綿を含む吹付け材は1995年に禁止されました。実際には石綿含有ロックウールの大部分は1980 年までに製造を中止しましたが、アサノスプレーコート(湿式)は1989年まで製造され、石綿含有吹付けバーミキュ ライト(ヒル石)が1995年まで製造されました。その他のセメントなどで固められた建材には2004年まで石綿が 1%以上含有している製品が多数ありました。1%未満の石綿含有は現在も規制されていません。
Q 日本の石綿規制は諸外国より遅れたとの事ですがその影響はありますか A EU諸国や米国では1970年代に規制が始まり、国連で石綿条約が採択された1986年頃には使用量はピーク 時の10分の1以下になっていました。しかし、日本ではその後も白石綿の使用が続き、世界一の輸入と建材などへ の使用が最近まで続きました。その期間に300万トン以上の石綿が使用され、対策の遅れによる中皮腫や肺がん の発生は5万人に及ぶかもしれないと推定されます。その被害は石綿含有建材からの飛散防止により予防が可能 で、対策が急がれます。
石綿条約採択は1986年日本での批准は2005年
Q 白石綿を使用している建物や建材の見分け方はありますか A 1981年以降2004年までに建設された建物には石綿を1%以上含有する建材と含有していない建材が混ざって 使用されていますが、これらの建材に石綿が含まれているかどうか調べるのは実際上きわめて困難です。石綿の8 5%以上が屋根や外壁に使用されたので、全ての建物の屋根や外壁には石綿が大なり小なり含まれているとして 対応するのが妥当です。1%未満の含有は現在も規制や表示の義務がされていませんので、一刻も早い完全禁止 が必要です。
Q 古い建物があちこちで解体されていますが大丈夫でしょうか A 吹付けはもちろんですが、加工や解体のため石綿含有建材を電動器具で切断や穴あけ作業時には多量に飛散 し高濃度(30本/ml以上)になることが分かっています。日本石綿協会は2020年頃までは毎年20万トン程度の 石綿が解体・廃棄されると予測しています。現在は大量に廃棄される石綿を安全に処分する方法は確保されておら ず、環境への拡散が懸念されています。したがって、環境中への飛散量を減らすためには解体・廃棄を安全に行う技 術や費用の裏づけがない状況で急いで解体せず、解体を出来る限り遅らせて、その間に解体・廃棄・処分を確実に 安全に行う公的な仕組みを作ることが大切です。 Q どんな職歴の方が特に危険ですか A 元富山医科薬科大学病理学の北川教授は危険性を3相に分けています。最も危険な第1相は石綿採掘・梱包・ 運搬・発送や石綿加工労働者やその家族、次いで第2相は石綿製品を直接使用する労働者、第3相はたまたま吸 入する機会がある住民です。石川県内には石綿採掘・加工業はなかったとされていますので、出稼ぎや他県からの 移住者で第1相の従事者を除いて、第2相が特に問題となります。 Q 具体的にはどんな業種が要注意ですか A 石綿の使用量からすれば建設業が最も危険と考えられますが、日本の業務上(労災)認定では石綿製品製造業 と造船業が多く、建設業の労災は少ない状況です。建設業は下請け自営業が多く、被害が出ても労災に認定されに くいためです。ドイツでは鉄鋼・金属業、化学・精密機械、電気、建設が多く、商業・管理など直接石綿を扱わない業 種(吹きつけ石綿の環境暴露)も多く認定されています。
Q 石綿暴露が想定される具体的な職業は何ですか A 北陸地方で発見されている石綿関連肺癌・中皮腫患者の職種は、大工、左官、塗装工、配管工、溶接工、電気 工、保線工等の土木建築職種と船員、造船工などです。海外の中皮腫患者の職種では機械修理、化学労働者、板 金工・据付工・金属接合(溶接)工、電気工、機械係、建築工事現場監督者、倉庫管理者・運輸労働者が多い職種で す。図に積万暴露の可能性が高い職業をまとめてみました。
Q 気づきにくい石綿暴露の可能性がある職歴にはどんなものがありますか A 酒造りの職人(酒の濾過に一時期使用)、歯科技工士(石綿布)、ガラス製造工(断熱材)、水道管やポンプの関 係者なども要注意です。石綿暴露チェックの問診票を作成しましたので、必要な方は石川県保険医協会事務局まで ご請求ください。
Q 石綿を吸った全ての人が中皮腫などの検査を受ける必要がありますか A 日本人全体が石綿を吸っているので、全員に中皮腫や肺癌の検査を定期的にするのは現実的ではありません。 問診により吸った可能性のある石綿の種類や量・年数を考慮して、頻回に検査を受ける必要がある人と特に検査の 必要がない人を分けることが必要です。 Q 石綿による危険度の高い人への健康診断制度はありますか A 石綿に係る業務に従事する労働者には雇用している事業者の責任で年2回の胸部単純写真による健診を行うこ とが義務付けられています。また、石綿取り扱い作業者のうちじん肺を有している者(県の労働局へじん肺管理区分 決定の申請が必要)には退職後年1回胸部らせんCTを含む健診、両肺野に石綿による不整形陰影か胸膜肥厚を有 している者(県の労働局へ健康管理手帳交付の申請が必要)には退職後年2回の胸部単純写真などによる健診が 労災保険で行われます。しかし、それ以外の多くの労働者や住民で石綿暴露の危険性が高い者には特に健康診断 の制度はありません。
Q 石綿の検査にはどのような項目が必要ですか A 石綿の検査の目的は2つです。1つは石綿による危険性が高い者に対して早期発見早期治療が可能な肺がん 等(将来的には中皮腫も)を早期に見つけるための定期検査であり、もう1つはがん以外の石綿による変化、特に石 綿を相当量(肺がん検査が必要な程度)吸っていたという体内の証拠(石綿肺や胸膜肥厚)を見つけるための検査で す。肺がん等の検査としては「ヘリカルCT」と「喀痰検査」、体内の証拠(石綿肺や胸膜肥厚)を見つける検査として は「HRCT(肺野条件と縦隔条件)」が有用です。 Q 肺がんの検査や石綿肺や胸膜肥厚斑などの検査を勧めるかどうかの基準はありますか A 確立された基準はありません。暫定的に、主に吸った石綿の種類、吸った年齢、吸った年数、喫煙の有無から危 険度を最大から最小まで5段階に分けてみました。中以上はまず一度HRCTで石綿肺や胸膜肥厚斑などの検査を 受け、所見があればその後年1-2回ヘリカルCT等で肺がん等の検査をする、小の場合は咳や痰などの症状に応じ て必要な検査をするという対応です。参考にして個別に対応してください。
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